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02 電車車掌

浅草線に乗務し続けて38年。今なお奥が深く、だから面白い。
興津 茂 Shigeru Okitsu 電車部泉岳寺乗務管理所 1978年入局

志望動機 / 進路に迷ったとき、心に浮かんだ父の背中

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私が東京都交通局に入ったのは今から38年前です。入局前は、鉄道学校の機械科で溶接や旋盤を学んでいましたが、実は鉄道に関心が高かったわけではありません。就職先を考える時期になっても、自分が何に向いているのかがまったくわからず悩んでいたときに、たまたま東京都交通局の採用試験があると知りました。その情報に興味を持ったのは、父親が公務員をしていたことが大きく影響していると思います。私は当時から、将来は結婚して家庭を持ちたいという願望が強くあり、父と同じように、安定して働き続けられる職場で仕事をしていきたいと望んでいました。そこで試験にチャレンジしてみようと決めたのです。今だから言えますが、入局前は都営地下鉄がどこを走っているのかも知らなかったほどです。ゼロからのスタートでした。

東京都交通局に入局して / 人の縁を感じた職場での幸運な出会い

当時は車掌としての直接採用だったため、入局後は鉄道営業(駅係員)の業務を2週間ほど経験した後に、車掌の研修が始まりました。業務に必要な様々な機器の操作を習得していくだけでなく、お客様へのサービスの心構えや、非常時の対応などについても学びました。最初は覚えなければならないことが膨大にあり、毎日がむしゃらに学びました。私にとって幸運だったのは、実地指導で担当についてくれた先輩職員が、たまたま同じ鉄道学校の、それも同じ空手部の出身だったこと。在学中に面識はなかったのですが、会話をする中でそのことを知り、親しみを感じてホッとしたのを覚えています。その先輩はとても親身に指導してくださり、わからないことを何でも聞けたのもありがたかったですね。縁とは不思議なものだと振り返って思います。

私の仕事 / 経験を積み重ね、体で覚えたドア操作の呼吸

入局から一貫して都営浅草線の車掌業務を担っています。乗務中は、停車駅でのドアの開閉や、車内放送などを行い、車内のお客様の様子にも目を配ります。快適な車内環境の維持には、空調管理も重要。各車両の温度をモニターで把握できるようになっていますが、混雑具合や湿度などで体感温度は変わるため、駅に停車した際には自分で車内に入ってみて、確認した上で調整するようにしています。
最も難しいのはドア操作です。発車間際で駆け込まれるお客様も多く、神経を張り詰めます。すべてのお客様をお待ちしたいところですが、それでは列車に遅れが生じてしまいます。ホームの状況を見極めながら呼吸を合わせるのが非常に難しいですね。試行錯誤を重ね、ドアを閉めるタイミングをわずかにずらすことで、お客様のドア挟まりを防げるようになってきました。長く経験を重ねても、今なお新たな発見があり、より良いサービスを追求していける。電車車掌は奥が深い仕事だと感じています。

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仕事のやりがい / 8両先から届けられた「ありがとう」に感激

駅に停車中に、運行状況や行先についての質問にお答えするなど、お客様と接する機会は多くあります。そのような場面でお客様から「ありがとう」と言っていただけるのは、やはり一番うれしい瞬間です。以前、発車間際のタイミングで先頭車両にお客様が駆け込んでこられたことがありました。その時はちょうど遅延回復に努めていた最中で、できれば早くドアを閉めて発車したいところでしたが、一瞬葛藤した末に、いったん閉めかけたドアを開けてお客様をお乗せしました。出発してしばらくたった時、そのお客様が最後部の乗務員室まで来られて「さっきはありがとう」と声をかけてくださったのです。先頭車両からわざわざ8両分を移動してお礼を伝えてくださったことに感激しました。しかしながら、駆け込み乗車は事故にもつながりかねず、非常に危険。どうか慌てず次の電車を待っていただきたいですね。

将来の目標 / 基本動作一つひとつの意味も的確に伝えたい

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入局以来、浅草線の車掌ひと筋で現在まで来ました。実はかつて、運転士になることを志して何度か選考試験に挑戦したことがあります。しかし残念ながら適性がなかったのか、試験に合格することはできませんでした。そこで落胆するのではなく、気持ちを切り替えて、これからは車掌として経験を積みながら、後進の育成に力を入れていこうと決めました。
日ごろ若手職員に伝えているのは、基本動作を大切にすることと、その基本動作を行うことの意味です。例えば車内放送を終えた後、必ずスイッチをオフにしたことを確認してからマイクを置く決まりになっていますが、これは、オンのままにしていると運転士とのやりとりや列車無線などの音声が車内に流れ込んでしまう車種もあるからです。単に「スイッチを切りなさい」だけでは、理解は深まりません。細かな一つひとつの基本動作にも理由があるのだと伝えています。

応募される皆さんへ / 強みが活かされるフィールドは必ず見つかる

都営地下鉄の車掌として現場に長く身を置いてきて感じるのは、一緒に働く周りの仲間が温かいということです。上司との距離も近く、何でもざっくばらんに話せる雰囲気があります。私自身は結果的に車掌ひと筋で来ましたが、東京都交通局には様々なキャリアの選択肢があることも魅力だと思います。車掌から運転士にもなる道もありますし、選考試験を経て鉄道事務(助役)に就くこともできます。交通局は組織が大きく様々な部署があるため、どんな人でも、自分に向いた業務や、自分の強みが活かされる役割をきっと見つけられるはずです。かつての私のように、自分が何に向いているか分からないと感じている人も、東京都交通局で様々な経験を重ねながら、自分の力がより発揮できるフィールドを探っていく方法もあるのではないでしょうか。

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ある一日のスケジュール【始発担当】

12:30

出勤

泉岳寺乗務管理所に出勤。アルコールチェックを行い、更衣室で制服に着替えます。
鏡での身だしなみチェックも欠かせません。

12:50

始業点呼

始業点呼を受けます。
何時にどの列車に乗るかが記載された「仕業(しぎょう)」と呼ばれる行路表を確認。
当日ペアを組む運転士と今日1日の乗務について打ち合わせをします。

13:10

乗務開始

泉岳寺駅のホームで前の車掌と交代し、乗務を開始します。間に2度の休憩を挟みながら、浅草線の押上~西馬込間を往復します。乗務中は、停車駅でのドアの開閉、車内放送による案内などを行います。休憩のタイミングや長さは乗務するダイヤによって異なります。
私は2度目の休憩時間に夕食を摂りますが、乗務を終えてからゆっくり食べる人もいます。

22:30

乗務終了

泉岳寺駅のホームで乗務員交代を終え、乗務が終了します。

23:30

仮眠

翌日の始発業務に備え、浅草橋駅へ移動。駅の近くにある仮泊室に入り、入浴後、仮眠します。押上駅始発の電車を担当する日もあり、その場合は押上にある仮泊室で仮眠します。

4:00

起床

制服に着替えて身支度を整えます。

4:20

駅開錠

浅草橋駅まで行き、シャッターの鍵を開けて入ります。浅草橋駅構内の控室でアルコールチェックを受け、待機します。

4:40

出庫点検

送電開始の無線が入ると、浅草橋駅のホームから線路に下り、引き上げ線に停めてある電車へと向かいます。電源を立ち上げ、ドアや発車ブザー、車内マイクなどを点検します。

5:00

乗務開始

始発電車は必ず助役の合図で発車します。

9:00

乗務終了

泉岳寺駅で乗務を終え、泉岳寺乗務管理所に戻ります。

9:45

退勤点呼

運転士とともに退勤点呼を受けて勤務終了。着替えて退社します。