写真家ハリー・グリエールが捉えた都営交通
ベルギーに生まれ、パリに在住するマグナム・フォトの写真家ハリー・グリエール氏は、カラー写真の第一人者です。その彼にとってこの東京の、都営交通の風景はどのような色彩に思えるのでしょうか。コンクリートジャングルとも言われ、人々の服装も全体としてはモノトーンな印象の強い東京ですが、彼の写真を見ると意外にも、黄色や赤、そしてグリーン、ピンクが混ざっていることに気づかされます。
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- Harry Gruyaert ハリー・グリエール (1941年ベルギー生まれ)
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1941年ベルギー生まれ。14歳の時、父親からカメラをもらい暗室作業も教わった。ブリュッセルの映画学校で学び、卒業後パリでフリーの写真家として活動を始める。カラー写真を得意とし、グラフィックな色彩と卓越した造形美で多くの人々を魅了している。写真展はパリの美術館パレ・ド・トウキョウ(1986年)、ヨーロッパ写真美術館(2016)他、多数開催している。2018年にはアントワープ州立写真美術館で回顧展を開催した。コダック・クリティック・フォトグラフィー賞(1976)、フォト・エスパーニャ・ライフ・アチーブメント賞(2016)他、受賞多数。主な写真集に『Morocco』(1990)、『Made in Belgium』(2000)、『Rivages』(2003)、『Moscow1989-2009』(2010)、最新作『Edges』 (2018)などがある。1981年よりマグナムに参画し、1986年より正会員、2019年より寄稿家。
ーー世界中の都市で撮影をされていると思います。世界の公共交通機関と、都営交通の、ここが違うなと思われたところはどんなことでしょうか。
「まず全てが整っており、正確で、複雑なことに驚かされます。たまに人身事故などで乱れることもあると思いますが、ふだんはまるで脳内のように動いていますよね。しかも別々の会社、別々の線が混在していると聞きました。脱帽です。フランス語では"シャポー"と言います。またその規模の大きさにびっくりします。」
ーー働いている職員についてはどのように感じましたか。
「私が素晴らしいと思ったのは、バスの運転手さんたちです。とてもプロフェッショナルです。他で見たことがありません。アメリカでもフランスでも。他でもやっているのかもしれませんが、リズムが違う。」
ーー乗っている人々はどのように見えたでしょうか。
「東京のラッシュアワー時の秩序は信じられません。みなさんは気長に列を作って待っていますが、私にはとうていできません。あんなに待たされ、押されても嫌な顔ひとつしない。しかもみんな、この広い東京、遠くから数時間かけて通勤、通学しているに違いありません。私は待つことが耐えられない。」
マグナム・フォトについて
1947年、ロバート・キャパの発案で結成された、会員が出資して運営する写真家の集団。
写真家の権利を守るだけでなく、写真に備わる記録性と芸術性を組織の中で融合させドキュメンタリー写真の地位を揺るぎないものにした。
現在ではメンバーの数も50名を超え、ニューヨーク、パリ、ロンドンと東京に支社をおき、フォトジャーナリズム、コマーシャル、ファッション、アートなど、様々な分野にてグローバルな活動を続けている。