写真家マーク・パワーが捉えた都営交通
マグナム・フォトの写真家マーク・パワー氏はエアバス社やイギリスのミレニアム・ドームの建設風景などを撮影している記録写真の第一人者です。都営交通ではその彼に都営交通の整備の現場を自由に撮影していただき、2018年3月に写真集「MAINTENANCE」として発行しました。ここでは、これらの写真を撮影されたマーク・パワー氏に、改めて今回のコロナ禍における公共交通の役割や、バックヤードで働く人々へのメッセージをお伺いしています。
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- マーク・パワー (1959年 イギリス生)
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英国人写真家、講師、キュレーター。イギリス南部ブライトン在住。 芸術大学で絵画を学んだ後写真に転向し、英国で10年ほど 雑誌や慈善活動関係の仕事を手掛ける。 以降、自主的 な長期プロジェクトと同時に、大規模な工業写真の撮影の仕事を続ける。パワーの作品は世界各国のギャラリーや美術館に収蔵されており、英国アーツカウンシル、 ブリティッシュ・カウンシル、ヴィクトリア&アルバート博物館、LACMA、ミルウォーキー美術館、マラケシュ写真ビジュアルアーツ美術館などのコレクションにも収められている。 今日までに10冊の写真集を出しており、最新作に、アメリカを多角的に捉えたシリーズ"Good Morning America"全5巻の第2弾(2019)がある。 1992年より2017年までブライトン大学にて写真の分野で当初は上級講師として、後に教授として教鞭を執る。 2002年マグナム・フォトの候補生になり、2007年に正会員となる。
――撮影された写真を見ると、たしかに現場はとても整っているなと思えました。
「東京は特に清潔で、管理の行き届いた、整頓された都市ですよね。全てが効率よく動いていて、訪れた現場に例外はありませんでした。夜中に地下鉄の隧道に入ったときも同じで、『ミニ東京』のようでした。すべてが清潔で整っており、それを包み込む都市、東京そのものでした。私は数多くの工場を訪れたことがありますが、このように整理整頓されていて、現場のエネルギーを遮ることなく、心地よく働くことができるところは初めてでした。それが危険だったりつらかったりうるさかったりする現場でも、皆さんとても重要な任務と受け止め、冷静沈着に対応されていたのが印象的でした。」
――働いている人のそれぞれの表情はいかがでしたか。
「働いている人は、とてもリラックスしているように見えました。すべてが清潔で、系統だって運営されていました。やらなければならない仕事を責任を持ってやられている感じがしました。日本文化の深い部分を垣間見られたような気がします。」
――また東京に来たいと思われますか。
「写真集『Maintenance』の撮影のすぐ後、10日間の家族旅行で東京を訪れました。今までで最も思い出に残る家族旅行で、今でもみんなでよくその時を振り返り、また行きたいと話しています。東京には深い縁を感じるので、またぜひ訪れたいと思っていますが......コロナの状況を思うと、きっと先のことになってしまいますよね。」
マグナム・フォトについて
1947年、ロバート・キャパの発案で結成された、会員が出資して運営する写真家の集団。写真家の権利を守るだけでなく、写真に備わる記録性と芸術性を組織の中で融合させドキュメンタリー写真の地位を揺るぎないものにした。現在ではメンバーの数も50名を超え、ニューヨーク、パリ、ロンドンに支社をおき、フォトジャーナリズム、コマーシャル、ファッション、アートなど、様々な分野にてグローバルな活動を続けている。