日本橋の路地裏。突如ぽっかりと浮かび上がる白の風景。それがHiromi & Co.の目印だ。ここの扉が開くのは週に3回だけ。知る人ぞ知る、まるで隠れ家のようなカフェ。
　白を基調とした、明るく清潔感のある店内。真っ白の中に温もりを感じるのは、オーナーでありデザイナーである浅井さんのセンスの賜物。深呼吸をすると、甘く香ばしいバターの香りが身体中を巡りうっとりする。ガラス越しに見えるオープンキッチンからは、これから誰かの手に渡るであろう焼き菓子達が愛らしく整列している。
　本場フランスで修業を積んだ小山さんは「ちょっぴり敷居が高いと思われがちなフランス菓子をカジュアルに楽しんでほしい」と言う。フランスの伝統製法を用いて、当たり前のことを当たり前にする。そんな研ぎ澄まされたシンプルの隠し味は多幸感。ご自身の幸せの記憶から紡がれたレシピの数々に、厳選された素材。小山さんが納得したものしか、店頭には並ばないという。

　看板メニューのいちごのシュークリームは、旬のフルーツとこだわりのクリームがたっぷり詰まったスペシャルなシュークリームだ。口に含んだ途端、脳内を幸せがジャックし、思わずくらりとする。その刹那、潔く爽やかに甘い記憶は静かに消えていく…。また一口、一口と追いかけていくうちに、あっという間にお皿の上は空っぽだ。忘れられないイイ女ってきっとこんな感じなんだろうなぁ。
　他の焼き菓子にも小山さんの愛情がたっぷりと…。“Hiromi & Co.らしさ”を追求し続けて開発に一年以上かかった、上質な蜂蜜が自慢のバスクチーズケーキ。定番人気のベーシックなシュークリームにはこだわりのカスタードクリームがたっぷり。どちらも、優しさが滲みでたここだけの味。それは誤魔化さず、“好き”にとことん向き合った人だけが表現できる味。ここは、お二人の最高の遊び場だという。なんて素敵なんだろう。ご夫婦の会話のリズムや温度が、そして今を楽しむ気持ちが、焼き菓子に、そして空間に溶け込み、あたたかくて居心地がよい。
　私たちには容赦なく進む日常がどうしようもなく隣にある。ねぇ…、頑張りすぎてはいませんか？ そんな時は、Hiromi & Co.のお菓子を一口。それは瞬間を上品に彩ってくれる魔法。私やあなたを優しく甘やかしてくれる日々のご褒美だ。