PROFESSIONAL WORKER ENCYCLOPEDIA

Profile
車両電気部 発電事務所 副所長

浅沼幸喜さん(あさぬま・こうき)(右)

平成5年入庁。大江戸線の建設、三田線や浅草線の駅防災設備設計など、建設・設計業務を経て、現在は発電事務所の副所長を務める。
車両電気部 管理課 課長代理(発電調整担当)

大貫健治さん(おおぬき・けんじ)(左)

平成5年入庁。発電事務所、交通局本局の発電担当を中心に、主に水力発電事業に関する業務に従事する。

使うだけでなく、つくる。
半世紀以上続く交通局の水力発電を
守り支える二人

 エコでクリーンな再生可能エネルギーとして注目される水力発電。実は、交通局が半世紀以上前から多摩川の流水を活用した水力発電に取り組んでいることをご存じでしょうか?
 交通局の電気事業は、1911(明治44)年、路面電車の運営と火力発電を行う東京市電気局が発足したことに始まります。現在は多摩川上流にある多摩川第一、多摩川第三、白丸の3つの発電所で水力発電を行い、発電した電力は都営バスの全ての営業所などで使用されています。そんな交通局の“意外な一面”ともいえる電気事業を支えているのが、浅沼さんと大貫さんです。
 浅沼さんが副所長を務める発電事務所は、多摩川第三発電所に併設され、3つの発電所と白丸調整池ダムの保守管理、運用などを行っています。「水が流れている限り動き続けるのが発電設備。多摩川第一と多摩川第三は運転開始から約60年経っているので、故障や不具合にはやはり気を遣いますね」(浅沼さん)。大貫さんは、発電事務所をバックアップしながら、対外調整や地域との連携窓口としての役割も担っています。「発電所やダムは地元自治体や住民のみなさんのご理解あってのもの。良い関係をつくり、一緒に事業を進められるよう努めています」(大貫さん)。

二人がバトンをつないだ
再生可能エネルギーPR館

 昨年、交通局の電気事業と奥多摩エリアの魅力を発信する再生可能エネルギーPR館(エコっと白丸)が白丸調整池ダムにオープンしました。「このPR館は、私が構想や設計を担当して、その後を引き継いだ大貫が形にしたものなんですよ」と浅沼さん。浅沼さんと大貫さんは同期入庁で、20代からの付き合い。二人の思いがこめられたPR館は奥多摩散策の立ち寄りスポットとしても人気を集め、11月には開館1周年イベントが企画されています。「エコな電気をつくっていることを紹介しながら、これからもみなさんに喜ばれる施設に育てていきたいですね」(大貫さん)。電気を使うだけでなく、つくる。長年交通局が取り組んできた事業は、さらに未来へつながっていきます。

PICK UP SCENE!

白丸調整池ダム

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奥多摩の深い緑に囲まれた白丸調整池ダム。1963(昭和38)年に完成し、地下の導水路を使って多摩川第三発電所に発電用の水を送っている。2000(平成12)年には地下に白丸発電所が併設され、ダムの放流水を使った発電も行われている。
ジオラマシアター

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再生可能エネルギーPR館のジオラマシアターでは、奥多摩地域のジオラマにプロジェクションマッピングで映像を投影。交通局の電気事業、普段は見られないダムからの放流の様子のほか、奥多摩の自然や魅力を美しい映像で紹介している。
壁面展示と浅沼さん

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再生可能エネルギーPR館の壁面展示を使って水力発電の仕組みを説明する浅沼さん。タッチパネル式のモニターでは、白丸ダムの役割など多彩なコンテンツを自由に見ることができる。中には60年以上前に撮影された建設工事中の貴重な映像も。
壁面展示と大貫さん

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大貫さんが回しているのは発電を疑似体験できる手回しハンドル。太陽光、風力、水力の3つの発電方法と競い、再生可能エネルギーの発電の仕組みを楽しみながら理解することができる。
ダムでの二人

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日ごろからよく連絡を取り合っているという二人。自然に囲まれて、黙々と絶え間なく電気をつくり出している発電施設があることをみなさんに知ってほしい。そんな共通の思いを持ちながら電気事業を支えている。

My Work’s Spirit is...

My Work's Spirit is ...

事業を俯瞰で見て調整する バランス感覚が大事(浅沼さん)

 技術職では、よく建設工事を人体にたとえて、骨格が土木、神経や血管が電気、表に見える皮膚が建築と言ったりしますけど、人体と同じでバランスが崩れると必ず不具合が生じる。その調整がうまくできずに痛い目を見たことがあって、全体を俯瞰で見ることを常に意識しています。今後、白丸ダム監視所の設備移設、多摩川第一発電所の設備更新など大きな事業を控えているので、滞りなく進めていきたいですね。

壁をつくらずざっくばらんに。 一体感がいい仕事につながる(大貫さん)

 だれとでも壁をつくらずに仕事をしたいと思っています。発電事務所とは距離が離れていますが頻繁にやり取りをしていますし、PR館の運営に協力してくださる奥多摩観光協会や自治体の方とも、気軽にご意見をいただける関係でありたい。今年の夏、地域の方々と協力してPR館で特産のわさびジェラートを販売したら、とても好評だったんです。これからもみなさんと一体感を持って事業に取り組んでいきたいです。