COLUMN
都営バスの「座席シート」の張り替え

クッションや座布団を作られた経験のある方なら、バス車両の「座席シート」を張り替えることがいかに難しいか想像がつくかも知れません。「古くなったシートを剥がして張り直す。」と、口で言うのは容易いですが実際にやってみると、生地をピタリと合わす難しさや、張りが弱いとダブついてしまうなど、そうカンタンにはいきません。
都営バスの約1500両ものバスのそれぞれにある「座席シート」がどのように張り替えられているのか。担当されている自動車工場のBB(ボディ部分修理)班の方々に伺ってきました。

都営バスの「座席シート」の張り替え

――そもそも、バス車両はどのくらいの年数使うものなのでしょうか。

バス車両は、約13〜15年間使用します。大体その半分の6〜7年目位のタイミングで車体全体をリニューアルする時期があります。ボディについては、水垢を落としワックス掛けを行い、車内においては床面の補修、また座席を洗浄し、状態の悪い座席シートは張り替えを行っています。

――年間で何両実施されますか。また、入場してから完成まで何日くらいかかるものでしょうか。

年間100両程度です。常時1両は自動車工場に入場しています。また、入場してから2日半で完成します。

――普段の清掃は車庫の方でやられていて、それとは別に約6〜7年目で大規模に清掃、座席シートの張り替えをしていると言うことでしょうか。

はい。車庫の清掃とは別に、自動車工場では座席をポリッシャーという機械で洗剤をつけて洗浄しています。張り替えについては、おもに運転席です。どうしても運転席は運転操作により擦れて痛みやすいので張り替えが必要となります。それに比べて客席は破れているところはほとんど無いので、客席については必要に応じて張り替えを行っています。

――座席シートの清掃、張り替えに掛かる時間はどのくらいかかりますか。

座席シートの清掃で1日半、また、運転席の座席シートの張り替えについては、座席シートの型取りから縫製に至るまで約3時間程度です。

――座席シート生地をミシンで縫い合わせる事も自動車工場で行っているのですね。

はい。ミシンでの縫製も自動車工場で行っています。

――「みんくる」の柄はいつからですか。

平成11年度に「みんくる」が都バスマスコットキャラクターに選ばれました。その後、平成12年度の導入車両から「みんくる」柄のシート生地が採用されています。

――いたずらされることはありますか。

いたずらやカッター等で切られるような事は時々ありますが、普段は車庫で対応しています。車庫で対応できないような状態のものは、年に一度あるかないかですが、そんな時は自動車工場に修理依頼されます。

――海外だとそもそも布製の座席ではなく、プラスチック製のシートですよね。

そうですね。あったとしてもプラスチックに布が貼ってある程度だと思います。座り心地は日本のバスとは全然違うと思います。

――運転席の座席のスポンジの下にはスプリングが入っているのですか。

スプリングの上にスポンジがあり乗り心地を良くしています。

――スポンジは型崩れしませんか。

以前のスポンジは、劣化し始めるとボロボロになっていましたが、現在のスポンジは改良されており、型崩れもしにくいです。

――座席シートの清掃、張り替えの作業で苦労されているところはありますか。

バスは全て同じように見えても、車種は沢山あって、座席シートについては、メーカー車種毎に違うため、新車が入る毎に座席シートの型を作るのが大変です。型のとおり生地を裁断し、ミシンで丁寧に縫製します。また、座席に生地を張り付ける際に、生地がシワにならないように、均等に引っ張りながら張ることも苦労するところです。

――自動車整備学校では座席シートの張り替え等、教わらないですよね。

そうですね。自動車整備学校では教わらないと思います。自動車整備士がミシンを扱うとはとても思えませんが、先輩から様々な技術を教えていただき、今ではバス車両の全てを直せるという自信にもつながっています。

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