連載 都営バスのヘッドマーク
写真: 前編 ヘッドマークの歩み

都営バスのシンボルといえば、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。じつは車体のフロント中央には、都営バスを象徴する"あるマーク"があしらわれています。全車両共通のシンボルとしてのマークと、選ばれた路線のために作られた6種類の「ヘッドマーク」。都営バスの"顔"をめぐる、デザインの豆知識をご紹介します。

前編ヘッドマークの歩み

局紋マーク
都営バスを象徴するマーク2種類。1991年まで使用されていた円形の交通局章の旧マークと、都のシンボルマークのTの字をあしらった現行マーク(ともに東京都交通局蔵)

 現在の都営バスのほぼすべての車両の正面部分、フロントガラスのすぐ下には、Tの字をあしらったデザインのマークが取り付けられています。かつてここには、「局紋マーク」と呼ばれる、東京都交通局の紋章が掲げられていました。この交通局章のマークは1911(明治44)年、東京都交通局の前身である東京市電気局の創設時に制定されたもので、東京都のシンボルである「東京都紋章」のデザインのうち、中心から6方向に広がる直線部分を電気の稲妻の形にアレンジした形をしています。
現在のマークは1989(平成元)年、「TOKYO」の頭文字であるTの字をモチーフに「東京都シンボルマーク」が制定されたのを受けて、1991(平成3)年に導入されました。銀色に輝くマークですが、古くなった車両から取り外し、ピカピカに磨き上げたものを新しい車両に取り付けて、大切に受け継がれながら使われています。

ヘッドマーク
都市新バスシステムのためにデザインされた、全6種類のヘッドマーク(ともに東京都交通局蔵)

 Tの字のマークは都営バス共通のシンボルですが、これとは別に6種類だけ、イラストをあしらったユニークなマークが作られています。それが、「都市新バスシステム」のためにデザインされた「ヘッドマーク」です。
ヘッドマークとは、特急列車やバスなどの愛称を記して先頭部に取り付けられるマークのこと。一方、都市新バスシステムは1980〜90年代にかけて、より便利で快適、魅力的なサービスを提供するために推進されたもので、都心や繁華街を結ぶ主要な路線に導入されました。その内訳は、都01系統から都08系統まで全部で8路線。都01系統(渋谷駅前ー新橋駅前)の「グリーンシャトル」など、路線ごとに愛称が付けられており、それぞれのイメージに合わせて全6種類のヘッドマークがデザインされました。
このヘッドマークを付けた車両は数こそ少なくなったものの、一部はいまもなお現役で運行を続けており、所々でその勇姿を目にすることができます。

後編につづく

  • 文/深沢慶太

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