
東京に残る唯一の都電「都電荒川線」。その最古参の車両「7000形」が、ついに引退を迎えました。人々を乗せて休まず走り続けること、なんと63年間。往年の名車両に、感謝の気持ちを捧げます。
前編都電7000形の活躍をふり返る

都電7000形(正式名称:東京都交通局7000形電車)が運行を開始したのは、1954(昭和29)年のこと。優れた乗り心地や洗練されたフォルムで、人々に大いに親しまれました。最盛期には都内に40系統もの路線を展開していた都電が路上から次第に姿を消していく中で、7000形は荒川電車営業所に集められ、74年からは都電荒川線内を運行してきました。
まさに都電の歴史を象徴する7000形ですが、当初の車体は「東京都電タイプ」と呼ばれる、ボディの四隅が丸みを帯びたデザインでした。それが、78年のワンマン化を契機として、直線基調の車体と前面に大きな1枚窓を備えた現在のかたちへ。乗降時の段差を解消し、車内に車いすスペースを設置するなど、バリアフリーへの先進的な対応が評価され、新7000形車両は鉄道友の会が優秀な車両に贈る「ローレル賞」を受賞しました。その後も冷房化が行われるなど時代とともに進化を続けながら、60年以上にわたって活躍を続けてきたのです。

その7000形も2017年の6月をもって運転を終了。都電の最盛期を知る最後の車両がついに引退を迎えるにあたり、「さよなら7000形」と書かれたヘッドマークが掲げられました。また、7000形のデザインを都営バスにラッピングした「さよなら都電7000形記念バス」を、かつての都電1系統(品川駅ー上野駅)のうち銀座ー日本橋間で3月24〜26日の3日間のみ運行。週末には歩行者天国で賑わう銀座の中央通りを、かつて行き交っていた7000形の勇姿そのままの記念バスが走り抜けたのです。
この特別運行に先駆けて、東京・荒川区の荒川車庫で行われた記念バスのお披露目に駆け付けたのが、元都電運転手の高橋撰年(のぶとし)さん。現在98歳の高橋さんが東京都交通局に入局したのは終戦直後の1946(昭和21)年。車掌としてキャリアをスタートし、67(昭和42)年に都電1系統とともに三田営業所が廃止されるまで、同営業所にて運転手として勤務しました。
「一目見て、あの頃の都電だ! と思ったらバスでした。懐かしいですね」と、にこやかな笑みを浮かべる高橋さん。7000形と記念バスを前に、当時の都電にまつわる思い出をうかがいました。
後編につづく
- 文/深沢慶太
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