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都営地下鉄のニュース【お知らせ】

  • 東京都交通局

軌道保守工事に係る発注方法の見直しについて(試行)

鉄道のメンテナンスについては、夜間作業が中心であること等を背景として、現在、技術者不足が課題となっています。交通局では、こうした状況を踏まえ昨年度から軌道保守工事に係る入札参加要件の緩和などの見直しを進めてきましたが、一部工事では入札不調が続き、受注者を確保できない状況にあることから、鉄道事業者と施工事業者へのアンケート結果や有識者からのご意見を踏まえ、更なる発注方法の改善について検討を進めてきました。
鉄道業界を取り巻く状況が厳しさを増す中にあっても、安定的な軌道保守体制を維持するとともに、適正な競争環境を確保するため、このたび、都営地下鉄等における軌道保守工事の一部について、発注方法を試行的に見直すこととしましたのでお知らせします。

  • 鉄道事業者及び施工事業者へのアンケート結果、有識者からのご意見については、参考をご覧ください。

1.発注方法の見直しについて

(1)対象工事

路線名 軌道保守工事内容
浅草線 軌道保守その他工事工種別単価請負工事(単価契約)
レール交換工事
三田線 軌道保守その他工事工種別単価請負工事(単価契約)
レール交換工事
新宿線 軌道保守その他工事工種別単価請負工事(単価契約)
レール交換工事
大江戸線(木場管区) 軌道保守その他工事工種別単価請負工事(単価契約)
レール交換工事
大江戸線(光が丘管区) 軌道保守その他工事工種別単価請負工事(単価契約)
レール交換工事
日暮里・舎人ライナー 軌道保守その他工事工種別単価請負工事(単価契約)
  • 大江戸線(木場管区):軌道保守その他工事工種別単価請負工事(単価契約)については、危機管理の観点から、一部工事を局自ら実施することとし、規模を縮小して発注します。

(2)発注時期の前倒し

債務負担行為を活用し、従来と比べて発注時期を大幅に前倒しすることで、履行開始までの準備期間が十分に確保できるように改善します。

前倒し発注のイメージ 見直し後は従来よりも準備期間が数か月確保できることが図示されている

(3)複数年度契約化

これまで年度ごとに発注していた運用を改め、契約期間を複数年度化します。

(4)工事積算方法等の見直し

工事積算方法を見直すとともに、契約後の物価・人件費の上昇等をより適切に反映していきます。

2.開始時期

令和8年9月7日以後に公告等を行う案件から適用します。

参考

鉄道事業者へのアンケート調査について

交通局における今後の軌道保守の在り方を検討するに当たり、他の鉄道事業者の状況を参考とするため、関係法令を遵守した上で、各社に対してアンケート調査を実施しました。

調査について
調査期間

令和8年4月30日から5月18日まで

対象事業者

国内の各事業者(JR・地下鉄・大手私鉄・公営企業) 11者

主な調査事項と結果
執行体制
  • 民間事業者の大半がグループ企業又は特定企業への外注を前提とした軌道保守体制を構築している一方で、公営事業者は、競争入札により外注先を確保している
  • 少数の事業者が、主要な工事について外注を用いず直営で実施している
契約
  • 民間事業者の多くが競争入札の形式によらず、グループ企業又は特定企業と契約している
  • 契約そのものは単年度で結ぶ事業者が多いものの、公営を含め複数年度契約を締結している事例がある
事業者間
の連携
  • 保守に用いる特殊車両を事業者間で貸借し、相互利用している事例がある
  • 一部の事業者において、検測・削正業務を受注している事例がある
  • 民間事業者を中心に、線路設備モニタリング等の技術開発や人材交流などの連携事例がある
【共通課題】将来の懸念事項について

軌道保守業務に関する将来の懸念事項として、各者とも「担い手不足」を挙げ、技術者不足から、直営職員・外注先の双方で人材確保が困難になりつつある状況が浮き彫りとなりました。働き方改革の機運が高まる中において、夜間作業を中心とする作業環境から敬遠される傾向にあり、若手人材の定着率の低さから技術継承が危ぶまれるといった問題も生じています。

地下鉄事業者の回答
事業者 回答内容
A 労働力不足により軌道工の確保が困難になり、大規模な分岐器交換やロングレール交換などの工事ができなくなる懸念がある
B 現場職員は、直営保線区で鉄道保守技術を習得するため職員の技術力は保たれると考えるが、職員技術者及び受注者の技術者不足が今後加速すると思われるため、技術者の人員確保が課題である
C 委託の保線技術者の高齢化や働き方改革の機運上昇により、夜間作業等の作業環境が敬遠される傾向があり、安定的な雇用が可能となる作業環境の整備が課題になると感じている
D 技術者不足などが見込まれる中、受注環境の悪化が懸念される。今後、施工供給力の確保に懸念がある
E 保守業務の大半を直営で実施しており、将来的な人手不足が懸念される。このため、検査・点検業務の高度化に向けて、軌道モニタリングの導入や業務のDX化に取り組んでいる
地下鉄以外の事業者の回答
事業者 回答内容
F 労働人口の減少に伴う現業職員の採用確保、外注先の作業員確保が今後困難となっていくことを懸念している
G 当社職員の他、外注先施工管理者と作業者の要員不足を懸念しており、如何にシステムや機械化が進もうと省力化には限界があるかと考えている。また、オートメーション化が進むほど技術力の低下を招くというジレンマもある
H 組織の年齢層において、中間層の割合が希薄なボトルネックとなっており、人材不足や育成が今後の課題
I 有能な技術職の安定的な確保が懸念される。電鉄側でも保線技術者の離職が多く若手が定着しない中、持続可能な保線の体制作りが課題だと思っている。これは当社のみならず同業他社、軌道施工会社でも同様の事象が発生しており、夜間作業など負担の大きい保線業界全体の課題であると思う
J
  • 人手不足・技術力の低下(技術伝承の危機)
  • レール、道床の経年増によるメンテナンスコスト増加
  • 気候変動に伴う集中豪雨、地震影響への対応
K 将来にわたる軌道保守業務において、保守人材の不足や外注先の技術者減少、設備の経年化といったリスクが顕在化していくことを懸念している。従来と同様の労働力集約型の保守を前提とした場合、安全性を確保しながら安定的に施工体制を維持することが困難になる可能性があると認識している。そのため、軌道検査のDX化や施工の機械化の推進等により、人材不足や受注環境悪化の影響を吸収し、安全性と効率性を両立した持続可能な保守体制の構築が必要であると考えている

施工事業者へのアンケート調査について

  • 将来にわたって持続可能な軌道保守の確立に向けた検討に当たり、必要な基礎情報を民間事業者から収集するため、アンケート調査を実施しました。
  • 結果概要は以下のとおりであり、鉄道業界を取巻く厳しい事業環境や公共調達における課題、事業者の危機感等が明らかとなりました。
調査について
調査期間

令和8年7月から8月まで

対象事業者

東京都競争入札参加資格登録事業者のうち「2200軌道」に登録のある事業者 121社

調査方法

WEBアンケート方式(調査会社が実施)

回答状況

38社から回答受領(8月31日時点)

調査項目

軌道保守業界を取巻く事業環境や業務の専門性、公共調達に関する課題等

アンケート調査結果概要

深刻な人手不足・人材育成等
軌道保守工事の深刻な担い手不足
  • 自社の施工管理者(監督者)及び協力会社の現場作業員の不足が、受注を見送らざるを得ない最大の要因となっています。
  • このほか、作業員一人当たりの負荷の増加や技能継承の不全など、経営への影響が生じています。

Q 受注機会に十分対応する上で、最も大きな制約となっている要因

資金繰り・特に制約はない:0%、作業員の不足:83.3%、資機材・設備の不足:4.2%、その他:12.5%

Q 直近1年間で、人員・体制の不足を理由として受注する意思があったにもかかわらず受注を断念した案件数

0件:25.0%、1~5件:37.5%、6~10件:25.0%、11~20件:4.2%、21件以上:4.2%、把握していない:4.2%

Q 過去5年間で、人手不足を理由として実際に生じた影響(複数選択)

作業員一人当たりの負荷が増加した:60.5%、受注を断念した:2.6%、応札を見送った:47.4%、技能継承が難しくなった:28.9%、外注比率が上昇した:15.8%、工期が長期化した:13.2%、特に影響はない:10.5%、その他:2.6%

軌道保守工事の深刻な担い手不足

軌道保守工事は夜間作業が中心であり、過酷な労働環境から若手の採用・定着が難しい状況です。

Q 担い手の確保が困難な主な要因(複数選択)

夜間・深夜作業が中心:73.9%、休日・勤務時間が不規則であること:65.2%、肉体的負荷が大きいこと:60.9%、賃金水準:43.5%、業界イメージ:21.7%、受注(仕事量)の不安定さ:13.0%、危険を伴う作業であること:8.7%、教育・育成コスト:0.0%、把握していない:0.0%、その他:0.0%

Q 直近3年間の採用実績

計画通り採用できた:8.7%、一部採用できた:73.9%、ほとんど採用できなかった:17.4%

Q 採用した人材の定着状況

おおむね定着している:73.9%、早期離職が多い:26.1%、採用自体がない:0%

Q 作業員で最も多い年齢層

20代:0%、30代~40代:52.2%、50代:47.8%、60代:0%

発注方式・事務手続に関する課題
発注方式の課題
  • 契約期間が単年度と短く、入札結果次第で翌年度以降の仕事量が大きく変動するため、見通しを持った経営計画の策定や計画的な人材・設備投資が困難となっています。
  • 小規模・分割発注の工事が主体で、作業員の移動・待機等で非効率的な現場運用となっていることに加え、歩掛などの積算単価と現場コストの実態との間に乖離が発生しています。

Q 公共工事における現行の発注方式で課題と感じる点(複数選択)

主な課題 選択率
単価・積算が実態と乖離している 41.7%
契約期間が単年度で短く、人材・設備投資の計画が立てにくい 37.5%
小規模・分割発注で効率が悪い(現場移動・待機等) 37.5%
仕様が固定的で、改善提案・新技術導入がしにくい 25.0%
設計変更・数量変更の協議に時間を要する 25.0%
予定外作業(突発・災害・夜間対応等)の扱いがあいまい 16.7%
リスク分担(事故・支障・第三者等)が不明確/偏っている 4.2%
競争性と品質・安全確保のバランスが難しい 4.2%
引継のための期間が短く、準備ができない 4.2%

Q 工事量が年度ごと・時期ごとに変動することによる経営への影響(複数選択)

主な影響 選択率
毎年の受注の見通しが立たず、経営計画が立てにくい 54.2%
通年での人員確保・雇用維持が難しい 50.0%
入札結果次第で翌年度の仕事量が大幅に変わる 45.8%
売上が読めない 25.0%
計画的な人材育成が難しい 16.7%
設備投資の判断が難しい 16.7%
若手の新規採用に踏み切れない 4.2%
特に影響はない 4.2%
その他 8.3%

Q 複数年契約などによる継続的な受注に関する評価

継続的な受注経験がある事業者(8社)のうち記載のあった意見 ※原文ママ

  • 自社の繁閑により、工期内においてある程度、作業時期を柔軟に対応することが可能となった
  • 安定的な受注の確保と計画的な要員配置が可能となる
  • 配置技術者の確保に悩むことがなく、作業の効率化ができて無駄なコスト削減ができる
  • 安定的施工体制維持や工事の平準化による計画の自由度が増すので評価できる
  • しっかりとした契約を結べれば問題ないと思います
  • 良い
未経験路線への参入に係る懸念事項
  • 受注経験のない鉄道路線で新たに工事を受注するに当たっては、鉄道会社との円滑なコミュニケーションをはじめとする様々な懸念事項があり、それらの解消には相応の準備期間が必要となっています。

Q 受注経験のない鉄道路線で新たに工事を受注するに当たって懸念される事項(複数選択)

主な懸念点 選択率
発注者との円滑なコミュニケーション 87.5%
鉄道会社の慣習・ルールの把握 79.2%
既設設備の状態把握(図面・台帳との照合) 54.2%
作業員の確保 50.0%
過去の保守履歴・施工記録の把握 45.8%
特にない 4.2%
その他 4.2%

有識者からの主な意見

  • 発注方法の見直しの検討に当たり、2点のアンケート調査の結果を共有した上で、有識者に意見を求めたところ、以下の意見が示されました。
主な意見
契約期間
  • 安定的な受注を通じた人材確保の観点から、契約の複数年度化は有効である。
  • 一方、物価については、少なくとも年度単位で見直すことができる仕組みとする必要がある。
  • 導入後の経過を注視し、事業者の意見を聴取した上で、発注内容によってはより長期の契約期間とすべきか否かを含め、慎重に検証・修正しながら運用すべき。
発注時期
  • 新規参入に必要となる鉄道特有の慣習・ルール、既設設備の状態、過去の保守履歴等の把握や作業員の確保に向け、十分な準備期間を確保することは、入札参加事業者の確保に有効である。
積算・価格設定
  • 単価・積算が実態と乖離しているとの事業者意見を踏まえ、施工実態を適切に反映できる単価・積算方法への見直しが必要である。
  • 将来的な価格変動への対応を含め、随時専門家の意見も聴取しながら、慎重かつ機動的に対応すべき。
施工体制
  • 人材の育成・確保が困難となる中、安定的かつ継続的な軌道保守を維持する観点から、現在の入札方式の持続可能性や、内製化を含む抜本的な対応の必要性についても検討することが重要である。
  • 一部路線において軌道を保守する軌道事業者が不在である現状を考慮すれば、必要なノウハウを局内で維持するため、一部路線の直営体制の強化が必要なことも理解できる。
  • 発注方法の見直しと並行して、直営化を含め確実に担い手を育成・確保できる方策を検討すると共に、軌道検査のDX化など中長期的な視点からの検討を並行して進めることが望ましい。
  • 軌道保守を持続可能な姿としていくためには、旧態依然とした人海戦術による検査・保守作業体制については見直しを検討すべき。一定のコスト増をしてでも、デジタル技術等の活用(いわゆるDX)による省人化を優先すべき時代になってきている。
その他
  • 持続可能な軌道保守のためには、一層の改善策を検討していくことが重要である。一例として「夜間作業の日中時間帯へのシフト」はワークライフバランス向上に資する施策であるが、利用者の利便性低下を最小限に抑えるにはネットワークの代替性の確保が前提であり、他の鉄道事業者との連携が必要となる。
  • また、安全輸送における軌道保守の重要性や担い手の労働環境改善の必要性に係る利用者の理解増進を図っていくべき。

※各項目は有識者から示された意見を要約・整理したもの

有識者一覧

※五十音順、敬称略

氏名 現職等
秋元 利明 (一社)日本鉄道施設協会
企画部 技術部長
金子 雄一郎 日本大学
理工学部土木工学科 教授
田中 博文 (公財)鉄道総合技術研究所
軌道技術研究部 軌道管理 研究室長
服部 薫 長島・大野・常松法律事務所
パートナー 弁護士
若林 美奈子 オリック東京法律事務所・外国法共同事業
マネージング・パートナー 弁護士

お問い合わせ先

契約手続に関すること

交通局資産運用部契約課:03-5320-6061(直通)

工事の内容に関すること

交通局建設工務部保線課:03-5320-6262(直通)