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連載 都営文字の世界 〜東京都交通局研修所 編
写真: 第2回 「絵」として目に入ってくる標識文字たち

第2回「絵」として目に入ってくる標識文字たち

道路標識のように、電車の運転に必要な標識が地下鉄には存在しています。その標識は、電車に乗っているお客様が目にすることはあまりありません。地下は暗いため、標識のデザインは、視認性に重点を置いています。黒や黄色、白、赤といった配色のコントラストも強く、遠くから見ても潰れない書体が中心。字というよりも「絵」として直感的に目に入ってくる文字を使った標識が多くみられます。

視認性を保つために、文字のサイズも詳細に決まっています。それは、ユニバーサル書体がなかった頃から受け継がれてきた、見やすさへの工夫のたまもの。さらに、遠くから見たときに文字が潰れないように、「ふところ」と呼ばれる文字内の空間が広く作られているのが特徴です。

例えば、手書きやカッティングシートで文字をつくる手法の標識(写真1)。工業的な直線が特徴で、ペンキの筆の形状により、書体の端が丸くなっているものやカットによって書体の端が直線的になっているものがあります。

また、普段は見ることができない標識といえば「トロリー使用」です(写真2)。常時、駅に置いてあり、取り外しが可能。その駅とどこの駅との間に作業中の保守車両がいます、というメッセージを示しています。保守は深夜に行われるため、一般の生活者は見ることができません。

お客様が目にすることのできる標識のひとつが「1出」(写真3)。正式名称は「第一出発標識」といい、ホームの端に設置されています。車内信号方式の三田線、新宿線、大江戸線で使われており、構内の出発進路の始まりを示しています。鮮烈なオレンジで色付けされており、全てにおいてコントラスティブにできています。

運転士が必ず確認する標識が、通称「セクション」と呼ばれる「電車線区分標」(写真4)です。一般的に、電車を運行するための電気を送る送電線は、変電所ごとに電圧が異なります。通常、電圧が変わる部分を通過するのは問題ありません。万が一またがって電車が停車してしまうと、異なる電圧をパンタグラフによって短絡して、接触部の発熱でパンオーバーと呼ばれる架線が断線してしまう事故が発生することがあります。運転士はその位置を把握しているので、「電車線区分標」がある区間に接近したらその区間内に停車しないように特に注意して運転をします。白地に赤い斜め線という、警戒心を抱かせるデザインが特徴です。

数字が飛び出した標識「13k」「4」は、起点から終点に向かって「13キロ」「400メートル」を表しています(写真5)。運転士や指令員、保守係員も使う「キロ程標」と呼ばれる、100m単位で設置されている距離の標識です。カーブなどでは、運転士が見やすい角度に設置され、緊急時にトンネル内で止まった場合、運転士はこのキロ程を参考に指令に停止位置を伝えます。また、保守に向かう作業員も、このキロ程標を元に現場へ向かいます。暗いトンネルの中でも見やすいように、立体的な白い看板になっており、文字のふところも広く、「ボディー」と呼ばれる文字を書く上での外枠まで、目一杯使っています。

色落ちしないように耐久性を考えて、文字を立体として作って貼り付けることも。
(写真1)
色落ちしないように耐久性を考えて、文字を立体として作って貼り付けることも。
丁寧に手書きで書かれており、生真面目さを感じます。
(写真2)
丁寧に手書きで書かれており、生真面目さを感じます。
外形の正円に対して、文字は直線のみで構成しています。
(写真3)
外形の正円に対して、文字は直線のみで構成しています。
この標識を目にすると、区間内で止まらないように速度をコントロールしながら運転します。
(写真4)
この標識を目にすると、区間内で止まらないように速度をコントロールしながら運転します。
文字のふところを確保するため、3の頭がボディーにぶつかるほど大きく描かれています。
(写真5)
文字のふところを確保するため、3の頭がボディーにぶつかるほど大きく描かれています。

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