想いを運ぶ東京都交通局の仕事

電車運転[路面]

電車部 荒川電車営業所

棚橋 弘介

2015年入局

幼い頃から鉄道の仕事を志し、高校卒業後はJRに就職。駅係員、電車車掌、新幹線の運転士へとステップアップする。しかし元来、人々の生活に寄り添った身近なものに携わりたいという考えを持っていたことから路面電車に惹かれるようになり、東京都交通局に入局。

一人ですべてを担う
都電ゆえの難しさ
だからこそ、東京に貢献
できている実感は強い

仕事と魅力

地域に根ざした東京唯一の都電として
ワンマン運転で安全運行を行う

都電荒川線(通称:東京さくらトラム)は東京に残る唯一の都電であり、地域に根ざした身近な路線として地元のお客様に愛されています。運転する立場から見た都電の特徴の一つは、車掌がいないワンマン運転であること。そのため、乗務中の業務は基本的にすべて一人で対応します。電車運転だけでなく、停留所停車時のドアの開閉、運賃収受、一日乗車券や回数券の販売、お客様へのご案内など、路面電車の業務は多岐にわたります。
また、路面電車は一般の道路上を走る乗用車と並走する場面や、踏切のない場所で道路と交差する場面もあります。車やバイク、自転車、歩行者が急に飛び出してくる場面は日常的にあります。その点では、自分の技術を過信することなく、より安全に気を付けて運行しなければなりません。
このように走行上の難しさは多々あるものの、お客様との距離が非常に近く、自分の力で運行を行っているという強い手応えを感じられるのは、都電荒川線の運転士ならではの魅力だと感じています。

画像:棚橋弘介

想いとエピソード

地域の足でありながら、
観光目的のお客様も
まさに「東京を支えている」仕事

都電荒川線は通勤、通学、お買い物など、日常の交通手段としてご利用いただくことが多い「地域の足」です。また、近年では地方や外国からお越しになるお客様も多く、東京の観光スポットの一つにもなっています。まさに「東京を支えている」という想いで、私は日々の仕事に当たっています。
都電荒川線の運行区間である三ノ輪橋から早稲田間では、桜の名所や昔ながらの生活が息づく下町、あるいは丘の上から望む高層ビルなど、東京の様々な風景が楽しめます。そのため、時には電車を1両貸し切りたいというお客様もいらっしゃいます。私も以前、10人程度のお客様による貸切電車を担当したことがありました。運転しながらお客様たちの様子を拝見していると、どうやら都電の旅を楽しみにしてこられた模様。そこで、会話の邪魔にならない程度に気を付けながら放送で沿線の案内をしたところ、大変楽しんでいただき、最後には大きな拍手もいただけました。

夢・目標

運転と接客双方の技術を磨き、
無事故運転の継続とさらなる
ステップアップを目指したい

都電はワンマン運転なので、上司や先輩がそばで見ているわけではありません。そのため、成長するためには自分自身を客観的に見つめ、自らブラッシュアップしていくことが必要です。
私の場合、前職で運転士として勤務していたこともあり、都電の運転自体は比較的早く覚えることができたのですが、お客様とのコミュニケーションには多少苦労することがありました。ご案内が上手く伝わらない場面などもありましたが、言葉の選び方や話し方などを工夫してきた結果、お客様とのコミュニケーションが徐々に円滑になっていきました。これからも運転技術とコミュニケーションの双方を伸ばしていきたいと思います。
運転の仕事に就いている間は無事故の安全運行を続け、「何事もなく一日が終わる」という大切な成果を積み重ねていきたいです。また、交通局の制度として助役選考試験というものがあり、ステップアップできる機会も用意されていますので、それにも挑戦したいと考えます。

画像:棚橋弘介

4Question

  • 今の仕事、「ここを見てほしい」といえば?

    運行中は、自分自身を冷静に見つめることを心がけています。交差点の通過速度は早すぎないか、前を走る自動車との車間距離は狭すぎないかなど、常に自分の作業を客観視し、少しでも違和感や危険な感覚があれば、その原因を探るようにしています。未然に危険に気付く「ヒヤリハット」の感覚は、決して忘れてはいけないことと心に留めています。

  • プライベートは何をしている?

    食べることが好きで、美味しいお店を開拓しています。風光明媚な湖南エリアが好きで、特に鎌倉のイタリアンがおすすめです。ピザがメインだったり、小皿を大事にしていたりと、いろいろな個性のあるお店が揃っていて飽きないですね。

  • 入局して一番成長したところは?

    急な飛び出しや予測できない事が多い走行環境であるがゆえ、自動車や歩行者からどう見えているのか、どう動こうとしているかなど、運転中 様々な視点で物事を見る癖がつきました。

  • 未来の仲間に一言

    とにかく一生懸命に、そして謙虚に取り組んでほしいと思います。初めての仕事では、いきなり上手くできることは少ないと思いますが、必ずあなたを見てくれている人がいます。一生懸命に向き合っていれば、きっと得られるものがありますし、周囲の先輩たちもフォローしてくれますよ。

画像:棚橋弘介

ワンデイスケジュール

  • 6:50

    始業・点呼

    制服に着替え、身支度を整えた後、乗車券などの持ち物確認、アルコールチェック、運行スケジュールの確認を行います。

  • 7:20

    始業・乗務

    三ノ輪橋駅から早稲田駅間の12.2キロメートルを運行します。乗務中は運転だけでなく、定期券や一日乗車券の販売なども行います。

  • 9:30

    休憩

    安全運行のため、連続で長時間乗務しないように勤務が組まれています。休憩は毎回、荒川電車営業所で取ります。

  • 10:00

    乗務

  • 11:15

    休憩

  • 11:40

    乗務

  • 12:30

    昼食・休憩

    営業所で休憩を取り、昼食を摂ります。次の乗務まで時間がある場合は、短い仮眠を取ることもあります。

  • 15:30

    乗務

  • 17:30

    休憩

  • 18:00

    乗務

  • 19:50

    入庫

    料金箱を回収して営業所内に運んだ後、電車を車庫に入れます。パンタグラフを閉じ、営業所に戻ります。

  • 20:15

    退勤点呼

    車両内の遺失物確認、明日の予定を確認して帰宅します。