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連載 建築家・青木淳の都営交通考察 番外編〜停留場のベンチについて
写真: 第2回 新しいベンチの構想とその模型

青木淳さんに都営交通を巡っていただき、その使われ方を考察していただくこの連載。今回は、東京さくらトラム(都電荒川線)の停留場のベンチがテーマ。そのありうべき姿を、4回にわたってお届けします。

第2回新しいベンチの構想とその模型

ーーこれは、美しい。そしてあまり見たことのない形をしていますね。

青木淳さん「はい。いままでのベンチの手すりはデザインとして言えば後付けです。ない方が美しいけれど、仕方なく付けている。でもこの新しいベンチは、あとから足すのではなくて、あらかじめ必要な手すりであり、構造体でもあるようにつくっています。ベンチの高さも立ち上がりやすいように既存のものより高くしています。」

ーーこの手すりの高さはなぜこの高さなのでしょうか。

青木淳さん「手すりの高さというのは、建築の法律で110センチ以上という規定があるので、110センチの規格品が多いんです。この手すりは立ったり座ったりするときに、体重を預けるために採用しているわけですが、ことさらに目立つ必要はありませんね。だからもっともオーソドックスな110センチ高さにして、周囲に溶け込むようにしています。周りにあるものの仲間にしてしまう、ようにつくっています。」

ーーこの手すりがそのまま基礎まで繋がっているのですね。

青木淳さん「はい。既製品の鉄パイプを折り曲げ、溶接してつくります。この手すりの間に、4本の角材を並んで渡すとそこがベンチになるという仕掛けです。この手すり兼構造体をまずつくって、それを支えにしてベンチとなる木を差し込むだけなので、場所に応じて、短いベンチも長いベンチもつくれるのです。」

ーー角材は、本物の木ですか?

青木淳さん「木がいいでしょうね。やっぱり。でもそのままだとまたすぐに朽ちてしまうから、液体ガラス化と言って、木材が水分に反応しないようにした材を使います。木材のまま、中の分子のあり方を変えてしまっている。風化して色は変わるけど、腐りはしない。」

ーー見たことないですね。座るとどんな感じなんでしょう。

青木淳さん「モックアップを作って、体験してみると一番良いですね。
手すりを握って、滑らないような塗装が要ります。
細かい所はこれからやっていくといい感じになっていくと思います。

ーーところで、今回、停留場の上屋も考えていただいたわけですが。

青木淳さん「上屋は10年、20年と経つなかで、いろいろな機能が増えていく。その量とか形が予想できないけれど、いずれにせよ増えてくる物をどのように収めていくか、その方針は立てて置かなければなりませんね。そんな拡張性を持った上屋を考えてみました。

ーーこのベンチは今の上屋のままでも違和感がないし、仮に上屋がこのように新しくなっても、いい感じになりそうですね。次回はモックアップをつくって実際に座った感じがどうか、実験をしてみましょう。

  • 青木 淳(あおき じゅん)

    建築家。青木淳建築計画事務所を主宰。青森県立美術館などの公共建築、住宅、一連のルイ・ヴィトンの店舗などの商業施設など、作品は多岐に渡る。1999年日本建築学会賞、2004年度芸術選奨文部科学大臣新人賞などを受賞。主な著書は、『JUN AOKI COMPLETE WORKS Ⅰ:1991-2004』、『同第2巻:青森県立美術館』、『同第3巻:2005-2014』、『原っぱと遊園地』など。

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