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軌道保守工事に係る発注方法の見直しについて

更新日:2026年9月10日

鉄道業界では、軌道保守を担う技術者や作業員の不足が課題となっています。
東京都交通局は、鉄道事業者及び施工事業者へのアンケート結果や有識者からの意見を踏まえ、将来にわたり安全・安定輸送を支える軌道保守体制を維持するとともに、適正な競争環境を確保するため、都営地下鉄等における軌道保守工事の発注方法を試行的に見直します。
本ページでは、軌道保守を取り巻く状況や見直しの背景・内容について、Q&A形式でご説明します。

軌道保守工事に係る発注方法の見直しについて(試行)

Q1 なぜ発注方法の見直しが必要なのですか。

A 鉄道の軌道保守工事は、安全・安定運行を支える重要な業務ですが、近年は技術者不足などにより受注環境が厳しさを増しています。交通局ではこれまでも入札参加要件の緩和等を実施してきましたが、一部工事では受注者を確保できない状況が続いています。このため、軌道保守体制を将来にわたり維持するとともに、適正な競争環境を確保する観点から、発注方法を試行的に見直すこととしました。
具体的には、次の3つの見直しを行います。

発注時期の前倒し

債務負担行為を活用し、従来と比べて発注時期を大幅に前倒しすることで、作業開始までの準備期間を十分に確保します。

前倒し発注のイメージ 従来は新年度4月の作業開始時と共に契約締結を行っていたが、見直し後は入札手続後に契約締結を前倒して行い、新年度の作業開始前に数カ月の準備期間を設ける

複数年度契約化

これまで、年度ごとに発注していた運用を改め、契約期間を複数年度化します。

工事積算方法等の見直し

工事積算方法を見直すとともに、契約後の物価・人件費の上昇等をより適切に反映していきます。

Q2 なぜ今、軌道保守の担い手確保が課題になっているのですか。

A 軌道保守工事は、列車の運行が終了した後の夜間・深夜に行う作業が中心です。休日の勤務もあり、勤務時間も不規則になりやすいことから、人材確保が難しい状況となっています。
施工事業者へのアンケートでは、担い手の確保が困難な主な要因として、「夜間・深夜作業が中心」「休日・勤務時間が不規則」「肉体的負荷が大きい」ことなどが挙げられました。
また、人手不足により受注を断念したり、応札を見送ったりした事例も確認されており、業界全体で担い手不足が深刻な課題となっています。

Q 担い手の確保が困難な主な要因(複数選択)

主な要因 選択率
夜間・深夜作業が中心 73.9%
休日・勤務時間が不規則であること 65.2%
肉体的負荷が大きいこと 60.9%
賃金水準 43.5%
業界イメージ 21.7%
受注(仕事量)の不安定さ 13.0%
危険を伴う作業であること 8.7%
教育・育成コスト 0.0%
把握していない 0.0%
その他 0.0%

Q 受注機会に十分対応する上で、最も大きな制約となっている要因

資金繰り・特に制約はない:0%、作業員の不足:83.3%、資機材・設備の不足:4.2%、その他:12.5%

Q3 鉄道業界全体では、軌道保守を取り巻く環境はどのような状況なのですか。

A 交通局が実施した鉄道事業者へのアンケートでは、軌道保守業務に関する将来の懸念事項として、多くの事業者から「担い手不足」が挙げられました。軌道保守を担う技術者や作業員の不足により、直営職員・外注先の双方で人材確保が困難になりつつあり、若手人材の確保・定着や技術継承も課題となっています。
また、一部の事業者では、軌道モニタリングの導入や業務のDX化、施工の機械化などに取り組んでいます。

Q4 複数年度契約や発注時期の前倒しは、なぜ必要なのですか。

A 施工事業者へのアンケート調査では、単年度契約では翌年度以降の受注見通しが立ちにくく、人材確保や設備投資の計画を立てにくいとの意見が寄せられています。このため、契約を複数年度化し、安定的な施工体制を確保しやすい環境を整えます。
また、受注経験のない路線へ新たに参入するには、鉄道特有のルールや設備状況、過去の保守履歴等の把握が必要であり、十分な準備期間の確保が重要とされています。このため、発注時期を前倒しし、作業開始までの準備期間を十分に確保します。

Q 工事量が年度ごと・時期ごとに変動することによる経営への影響(複数選択)

主な影響 選択率
毎年の受注の見通しが立たず、経営計画が立てにくい 54.2%
通年での人員確保・雇用維持が難しい 50.0%
入札結果次第で翌年度の仕事量が大幅に変わる 45.8%
売上が読めない 25.0%
計画的な人材育成が難しい 16.7%
設備投資の判断が難しい 16.7%
若手の新規採用に踏み切れない 4.2%
特に影響はない 4.2%
その他 8.3%

Q 受注経験のない鉄道路線で新たに工事を受注するに当たって懸念される事項(複数選択)

主な懸念点 選択率
発注者との円滑なコミュニケーション 87.5%
鉄道会社の慣習・ルールの把握 79.2%
既設設備の状態把握(図面・台帳との照合) 54.2%
作業員の確保 50.0%
過去の保守履歴・施工記録の把握 45.8%
特にない 4.2%
その他 4.2%

Q5 複数年度契約では、競争性をどのように確保するのですか。

A 複数年度契約とする場合も、競争入札により受注者を決定します。今回の見直しは、適正な競争環境を確保しながら、安定的な施工体制を整えることを目的としています。
複数年度契約は、人材確保や計画的な要員配置、作業の効率化などにつながるとの意見があります。導入後も、競争性への影響を含めて検証し、必要に応じて見直していきます。

Q 複数年契約などによる継続的な受注に関する評価

継続的な受注経験がある事業者(8社)のうち記載のあった意見 ※原文ママ
自社の繁閑により、工期内においてある程度、作業時期を柔軟に対応することが可能となった
安定的な受注の確保と計画的な要員配置が可能となる
配置技術者の確保に悩むことがなく、作業の効率化ができて無駄なコスト削減ができる
安定的施工体制維持や工事の平準化による計画の自由度が増すので評価できる
しっかりとした契約を結べれば問題ないと思います
良い

Q 公共工事における現行の発注方式で課題と感じる点(複数選択)

主な課題 選択率
単価・積算が実態と乖離している 41.7%
契約期間が単年度で短く、人材・設備投資の計画が立てにくい 37.5%
小規模・分割発注で効率が悪い(現場移動・待機等) 37.5%
仕様が固定的で、改善提案・新技術導入がしにくい 25.0%
設計変更・数量変更の協議に時間を要する 25.0%
予定外作業(突発・災害・夜間対応等)の扱いがあいまい 16.7%
リスク分担(事故・支障・第三者等)が不明確/偏っている 4.2%
競争性と品質・安全確保のバランスが難しい 4.2%
引継のための期間が短く、準備ができない 4.2%

Q6 見直しによって安全性や工事品質に影響はありませんか。

A 今回の見直しは、工事に求める安全性や品質の水準を変更するものではありません。発注時期や契約期間、工事の積算方法等を見直すことにより、必要な施工体制を安定的に確保し、安全な鉄道運行を支える軌道保守体制を将来にわたり維持することを目的としています。

Q7 有識者は今回の見直しについて、どのような意見を示したのですか。

A 有識者からは、安定的な受注を通じた人材確保の観点から複数年度契約は有効であるとの意見が示されました。また、新規参入に必要な準備期間を十分に確保することは、入札参加事業者の確保に有効であるとの意見や、施工実態を適切に反映した単価・積算方法への見直しが必要であるとの意見も示されました。
さらに、発注方法の見直しと並行して、担い手の育成・確保や軌道検査のDX化など、中長期的な取組を進めることが望ましいとの意見も示されました。

有識者からの主な意見

契約期間
  • 安定的な受注を通じた人材確保の観点から、契約の複数年度化は有効である。
  • 一方、物価については、少なくとも年度単位で見直すことができる仕組みとする必要がある。
  • 導入後の経過を注視し、事業者の意見を聴取した上で、発注内容によってはより長期の契約期間とすべきか否かを含め、慎重に検証・修正しながら運用すべき。
発注時期
  • 新規参入に必要となる鉄道特有の慣習・ルール、既設設備の状態、過去の保守履歴等の把握や作業員の確保に向け、十分な準備期間を確保することは、入札参加事業者の確保に有効である。
積算・価格設定
  • 単価・積算が実態と乖離しているとの事業者意見を踏まえ、施工実態を適切に反映できる単価・積算方法への見直しが必要である。
  • 将来的な価格変動への対応を含め、随時専門家の意見も聴取しながら、慎重かつ機動的に対応すべき。
施工体制
  • 人材の育成・確保が困難となる中、安定的かつ継続的な軌道保守を維持する観点から、現在の入札方式の持続可能性や、内製化を含む抜本的な対応の必要性についても検討することが重要である。
  • 一部路線において軌道を保守する軌道事業者が不在である現状を考慮すれば、必要なノウハウを局内で維持するため、一部路線の直営体制の強化が必要なことも理解できる。
  • 発注方法の見直しと並行して、直営化を含め確実に担い手を育成・確保できる方策を検討すると共に、軌道検査のDX化など中長期的な視点からの検討を並行して進めることが望ましい。
  • 軌道保守を持続可能な姿としていくためには、旧態依然とした人海戦術による検査・保守作業体制については見直しを検討すべき。一定のコスト増をしてでも、デジタル技術等の活用(いわゆるDX)による省人化を優先すべき時代になってきている。
その他
  • 持続可能な軌道保守のためには、一層の改善策を検討していくことが重要である。一例として「夜間作業の日中時間帯へのシフト」はワークライフバランス向上に資する施策であるが、利用者の利便性低下を最小限に抑えるにはネットワークの代替性の確保が前提であり、他の鉄道事業者との連携が必要となる。
  • また、安全輸送における軌道保守の重要性や担い手の労働環境改善の必要性に係る利用者の理解増進を図っていくべき。
  • ※各項目は有識者から示された意見を要約・整理したもの